ピアノ・ソナタ第三番〈眠りの森〉

Piano Sonata No.3 “SLEEPING FOREST”

 

この作品はピアニスト鬼頭久美子さんの委嘱に応えたものである。2024年晩春にオファーをいただいて想を温め、2025年春は名のみの二月のとある朝ふわりと降りてきた奇妙なおまじない歌に導かれるように作曲が始まり、イノセントなあどけなさとダークな恐ろしさが入り混じる深緑の謎めいた響きの中を巡るうち、新緑まぶしい五月の午後に気づいてみれば全三楽章41頁37分、どこでもないのに何処でもある、徴に満ちた底なしのメルヘンが誕生していた。

 

Ⅰ:彷徨Wandering

Ⅱ:聖域 Sanctuary

Ⅲ:脱出 Escaping

 

ねむりのもりは ふしぎなところ

まぶたとじれば ゆめがかなうよ

 

仄暗い森の奥へと迷い込み 揺れる樹々のざわめきに慄き 水に映る星々のささやきを聴くうち 記憶の底から浮かんできた 不思議なおまじない歌を口ずさむと 秘密の聖域の結界が開かれ 無時間の静謐に身心ゆだね 月の光に浄められる 兆しを告げる鳥の声に発として すぐそこにまで迫る嵐の唸りに意を決し 明かり始めた森の縁のそのまた向こうへ 旋風おしわけ一心不乱に駆けてゆく…

 

ねむりのもりは おかしなところ

ひとみこらせば ゆめはさめるよ

 

 

[委嘱]

 

鬼頭 久美子

 

[初演]

 

2025年11月11日 名古屋市・電気文化会館コンサートホール 鬼頭久美子(pf)